005: 7孔尺八は邪道か

7孔尺八を舞台で見かけますが、これって一体、どうなのでしょう。尺八は、やっぱり5孔でしょうか。

全然、邪道ではありません。7孔も、立派な尺八の一スタイルです。

この件に関して、今まで喧喧ガクガクの様々な議論が繰り返されてきましたが、筆者の意見としては、むしろ7孔の方が楽器としての性能に優れており、積極的に7孔を導入してもよい、と思います。

地歌では、ツのメリの味わいがどうの、という人もいますが、糸方の視点からして、断金の音色に特別な意味は存在しないし、八寸以外で吹けばツのメリは別の音程だし、そもそも三曲合奏の尺八の前身は胡弓なので、一般論としては全く根拠がありません。個人の好みのレベルの意見です。

琴古流古典本曲の手法に関しても、7孔で不可能な手法というものは存在しません。

5孔派の意見を総括すると、メリ音の音色が重要である、ということですが、尺八は音色を追及するあまり、音程という、音楽として成立する最低限の要素をないがしろにしています。

だったら、フルートで吹けばいいんでない?、わざわざ尺八で吹く価値がないでわないか!というご意見、ごもっともです。

音程の合わない尺八で吹くより、フルートで吹いた方が、よっぽど精神衛生上健全です。

それでも、我々は尺八で吹くことに意義を見出しているから、このような議論が延々続くのです。

楽器の都合で自らの音楽に制限が加わる、その理不尽に演奏者はイカってしかるべきなのです。そうした音楽家としての当然の欲求から生み出された多孔尺八を頭ごなしに否定するのはあまりに排他的です。

但し、世の中の尺八流通システムが5孔中心に出来上がっているので、7孔を手に入れるにはややハードルが高めです。

今現在の世間一般の尺八といえば5孔だし、5孔で始めて、それで慣れてしまう人が大多数です。

5孔といえど、間違いなく尺八であるわけですから、現在5孔を吹いておいでの方は、そのままでよろしいと思います。自らの欲求で7孔が必要だと感じたとき、7孔を求めればよいと思います。

(7孔への改造は、製管師の方を必ず通してください。日曜大工の経験と勘を頼りに自前のキリやドリルで穴をあけようとすると、悲しい結果になることうけあいです)
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Comments

“005: 7孔尺八は邪道か” への1件のコメント

  1. すばらしい内容ですね。ありがとうございます。
    何故か、尺八に目覚めてしまった即興歌好きな者です。
    本当はサックスをやろうと思っていて、すぐには買えず、、
    篠笛で横笛を、ケーナを、真竹を掘ってきて尺八を、、水道管で、いろんな尺八を実験。この、自分でも作れる笛という世界に、凄い面白さを見出し、とりこになっています。もちろん、人様に渡せる楽器を作る技量はありません。が、自分が削った竹が奏でる音色そのものは、素晴らしく美しい。バランスは悪くても、音色は、完璧です。だから、尺八って、物凄く面白いです。