009: 五線譜が読めない

五線譜が読めたらいいなと思うのですが、なかなか読めるようになりません。

五線譜神話が、尺八界にはあります。

尺八縦譜よりも、五線譜のほうが上等の音楽に見える。五線譜だというだけで金科玉条、崇め奉る傾向があります。

真似をする能力おそらく世界第一位の日本人が歴史の中ですり込まれた先入的価値観、「欧米の文化は優れている」と思ってしまいがちなのが遠因となっています。なんとなくで無根拠なのに、五線譜の方がエラく見えてしまう。

五線譜の利点は唯一、その普遍性にあります。尺八だけで完結しない演奏シーンが最近では普通ですが、その場面での共通言語として、五線譜のパワーは絶対無二です。

しかし、五線譜の利点は、実は、それだけなんです。

その他のあらゆる点において、あえて五線譜を使うべき点は見当たりません。表現力の面でも、可視性の面でも、五線譜の方が読み易いと感じるのであれば、それは尺八縦譜を記述する側の怠慢です。

筆者自身の今までの演奏経験からしても、やっぱり五線譜でなくちゃあ、と思ったことはただの一度もありません。縦譜上等、胸を張って、縦譜を吹くべきです。

しかしだからといって、五線譜を無視してよい、ということではありません。

世の中の音楽は普通、五線譜です。言うなれば、尺八用の音楽以外の全ては、五線譜なのです。

是非、尺八専用でない音楽へ、目を向けてください。そこには乗り越えるべきハードルがたくさんあって、面倒な世界であることは間違いないのですが、きっとあなたの尺八人生を幸せにするものとなりえます。

そのとき、共通言語としての五線譜が読めないことは、明らかにマイナスです。

では、五線譜が読めるようになるには、どうすればよいか。

ズバリ、数をこなして慣れてください

あなたが尺八縦譜を読めるようになるまでに経験した苦労を、もう一度五線譜でやり直してください。

新しい楽譜を覚えるのだから、苦労しなくて覚えようとするのはムシが良すぎます。時間をかけて、数をこなして、自分の頭と五感で苦労してください。

はじめての五線譜尺八に挑戦する上で、ひとつだけ、アドバイスを差し上げましょう。

調号を意識して下さい。調号とは、ト音記号のすぐ右にかたまって並んでいるフラットか、シャープのことです。

ハ長調とか、ト短調とか、名前に関しては無視して構いません。覚えるだけムダです。

ポイントは、フラット・シャープが1つもないときのドレミとロツレの対照関係、そこからフラットが1つになったとき、2つになったとき、どの指(メリ音)が変化するか、ということを真っ先に覚えてください。

 フラットは3つまで、シャープは1つまでの調号の曲が、尺八向きといえます。この4パターン+調号なしの、合計5パターンに関して、努力してみましょう。
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