(東京都・Yさん・?才女性)
人間、緊張すると、手が震えます。
これは、過度の緊張=生命の危機と体が判断し、外敵に対抗するための筋肉組織は臨戦体制万全でっせ、というサインです。
しかし、法治近代社会において、外敵は物理的攻撃を仕掛けてきません。
舞台上のあなたにとっての外敵とは、聴衆であり、舞台上の共演者であり、舞台袖で耳をそばだてている人々であり、終演後にあなたに批評を浴びせてくる人々です。しかしこれらに悪意や攻撃の意思がある場合は稀であり、問題なのは、それを過剰に意識しているあなた自身です。
これは、いけません。すべからく解消されるべき深刻な問題といえます。
しかし、問題はあなたの心の中にあり、その解消は容易ではありません。多くの分野の専門家たちが躍起になって研究を重ねている分野です。
1.イメージトレーニング
舞台に着席するところから、幕が上がって、演奏を開始し、吹き終わるまで。ドキドキ感を鮮明に。重要なのは、緊張してダメダメな自分ではなく、最後まで見事に吹き切ったナイスな自分をくっきりとイメージすることです。
これを日常の稽古で、ただ吹くのではなく、一曲さらう中でこのイメージトレーニングを行いながら吹きます。
2.どうせ尺八なんて・・・
緊張の根底には、失敗への恐怖心があります。失敗できない、失敗したくない!というプレッシャーです。
別に、失敗しても、だから何?と、思ってみましょう。
3.演奏に一点集中できる状態をつくる
これに対する一つの克服法として、「演奏直前に、舞台上で何か一つ目標を決めて、それを成功させる」という方法があります。
例えば、椅子奏であれば、椅子にきっちり腰掛けて背筋をピンと伸ばす。あるいは例えば、10秒間息を止める。これだけでいいんです。集中完了。それを成功させると、次に成功させるべき目標が見えてきます。
4.演奏以外のことに意識をとばしてみる
演奏後、飲み会で大吟醸全種類制覇する、特大ステーキ500gミディアムレアをオイスターソースで一気に食べる、銀座の超人気店チーズケーキバイキングでお腹いっぱい、欲しかったバッグを買う、時計を買う、旅行に行く、など、めくるめく楽しみの限りを、演奏に集中するべき瞬間に、想像してみましょう。
緊張発生のメカニズムとしては、演奏がどっちに転ぶかわからない、その不透明さが不安となり、そこから恐怖心が生まれ、緊張へと結びつきます。よって、このメカニズムの根元の部分、「演奏がどっちに転ぶかわからない」という状態(=練習が不足していることの自覚、或いはそれに対する潜在意識からのダメ出し)を解消すれば、結果として緊張は生まれません。つまり、演奏が進むべき方向を、確実にしておく=事前の練習稽古を完璧にしておく、という方法が導き出されます。
Comments
“015: 舞台で緊張してしまう” への3件のフィードバック
尺八暦30年の私も人前で演奏するときは、緊張します。若いときは緊張し過ぎて、音が出ず(尾上の松)最初から終わりまで悲惨な演奏でした。
今でも、やはり唇が振るえ、音に影響することが時々あります。
最近、オカリナを演奏している方と話をする機会があり、「緊張」のことを質問したら、「吹奏楽器は心臓に一番近い楽器だから心臓の動悸が、ストレートに音に影響する」。確かに箏などの弦楽器と異なり、舞台にあがるとどんな人でも心臓がドキドキします。そのドキドキが唇に影響し、音にも影響することは身をもって実感します。
結論として、私が「緊張」対策としての対策は
1.誰でも人前で緊張する。緊張して当たり前。邦山も鈴慕も五郎もみんな。
2.その緊張しながらでも曲を最後まで演奏する。
3.緊張しながらも最後まで演奏した自分を褒めてやる。「よくやッたぞお前」
4.本番での演奏は練習の3割位と考え、とにかく練習、練習。
5.その練習することに、日本伝統楽器の尺八の意味があるように思う。
最近そんなことを感じます。いかがでしょうか。
尺八を単なる楽器の一つとしてとらえるのではなく、尺八を「道」としてとらえ尺八道を探究することは、尺八とつきあっていく上での理想形の一つであると同時に、芸能を次世代に伝えていくことにつながっていくのだと思います。
舞台の緊張について、最近の研究の一例としては、日常の演奏を常に「録音」していると良い、という結果が出ています。普段は朗々と吹いているのに、ある時録音を始めてみると、その瞬間から突然音が出なくなった、という方もいらっしゃいました。日常的録音により自分以外の誰かを継続的に意識し続けることになり、舞台の非日常性が少しなりとも緩和され、同時に、その他の要素に影響を受けない「集中能力」が向上する可能性があります。
指導者側の立場からすると、生徒は一つの舞台のために何ヶ月もかけて準備している場合が多く、そこにかかる心情は究極的に深刻です。一言をもって一蹴に付すことのできない、人間関係を基盤にじっくりと時間をかけていくべきデリケートな問題といえます。
私もとても緊張します。
手汗、震えが止まりません…。
少しずつ克服できるようイメトレ、練習をがんばりたいと思いました。
録音をしようとしてとたんに音が出なくなったことがあったので演奏の
録音も取り入れてみようと思います。