018: 才能がない

才能がないと自覚しています。こんな自分でも、うまくなるにはどうすればよいでしょうか。

一流になるには、才能がある上に人の1000倍の努力を積み重ねた上での勝負となりますが、一流未満の場合、才能に依存する範囲はそれほど大きくありません。

自分が下手なのは才能のせいだ、と結論づけてしまう前に、上手な演奏とは何か、を考えてみます。

楽器演奏の手順は以下の2ステップで行われます。

1.頭の中に、演奏しようとする音楽のイメージを構築する

2.それを演奏技術をもって実際の音に変換していく

この2ステップにおけるそれぞれの得点のかけ算により、楽器演奏の得点は決定します。

1のイメージ力は器の大きさ(満点)を規定し、2の演奏技術はその器に入れる水の量(実際の得点)を決定します。

イメージが100点、演奏技術が100点なら、100点満点中の100点で文句なし、演奏結果は100点。

イメージが90点で演奏技術が60点なら、90点満点のところの6割で、最終の演奏結果は54点。

イメージが30点のところ演奏技術だけ90点でも、最終の演奏結果は27点となります。

100点満点の中での演奏、してますか?

30点満点では、30点以上の演奏はできません。

30点満点の器しか用意できてないのに、「いくら練習しても才能がないから下手だ」と、勘違いしていませんか?

それは、演奏技術、吹き方だけを鍛えようとしているからです。

イメージ力のトレーニングを、行ってください。

 

では、そのイメージ力を具体的にはどうやって鍛えるか。

演奏技術が楽器を手に持っている状態で鍛え上げる能力なのに対し、イメージ力は楽器を手に持っていない状態で鍛え上げる能力です。

イメージ力は、もっぱら、自分が演奏していない時に練成されます。

イメージ力は、日常生活の音楽環境によって練成されます。

イメージ力は、人の演奏を、その意思を持ちながら丹念に聴くときに効率的に練成されます。

イメージ力鍛錬の一番手軽な例としては、ヘッドホンステレオに尺八を入れて聴きます。移動時間などで流しっぱなしにします。

これが、尺八上達のためのかなり有効でかつ現代人の生活環境においてはほとんど必須に近い稽古なのに関わらず、推奨している指導者はほぼ皆無です。

時間がないから練習できません、というのはことごとく言い訳になっていません。

駅の階段をのぼっている間でも、尺八の稽古は可能なのです。

 

さて、それでは、イメージ力鍛錬の結果をどのように実際の演奏に活かすか、というところを解説します。

イメージ力とは、極端に言えば、ケーススタディだと思って構いません。

つまり、今までに、どのような有用な演奏を聴いてきて、いかにそれを記憶蓄積していて、同様のパターンが楽譜上に出現したときにいかにそれを十分に引出しから取り出せるか、ということです。

名付けてストック&チョイス奏法、この瞬発力と爆発力が、イメージを構成する骨格となりえます。

ストック&チョイスの実践を積み重ねると、自分の得意なパターンというものが作られてきます。

これを、演奏者の個性と呼びます。

あとは、それを実際の演奏技術により、音に変換するだけです。

 

 

Copyright(c) 2004 OFFICE RINDO. All Rights Reserved.