019: 音程がよくわからない

尺八同士で合奏の前に、甲のロなどで“音合わせ”をしますが、音が合っているのか、いまいちわかりません。音合わせがうまくできるこつのようなものは、ありますか。(神奈川県・Wさん・20才女性)

演奏中、音程をそろえてください、とか言われても、きょとんとしてしまう場合がほとんどでしょう。

でも、後で録音なりをよーく聴いてみると、たしかに音程が合ってないな、と思ったりします。

演奏中に、自分の音とその他の音を区別するのと、傍観的に、二つの音程を区別するのとでは、難易度としては圧倒的に前者の方が上です。

それでなくても、尺八演奏者は、演奏中、自分の音を維持するのに精一杯です。

それなのに、その作業を継続しながら、他の音との音程の比較、それも明らかに異なる音でなく、半音未満の、数十セントの音程を聴き分けられるかというと、通常はそんなの無理です。無理でなくてもかなり困難です。

たとえ、音程の違いに気付けたとしても、自分が高いのか、低いのか、この50%の確率の判断を確信をもって行い、その判断が合っているという前提のもと、吹き方によって音程をスライドさせてしまおうなんて、・・・はあ、書いてていやんなってきた。

これが一般的、と考えて支障ありません。

しかし、糸方にはこの事情は通用しません。糸方は、演奏中もきちんと僅かな音程差をききわけることが可能です。

糸方は客観的な楽器、尺八は主観的な楽器と、この一面を切り取ればいえるのかもしれません。

尺八は、主観的な楽器です。自己の音と、その他の音を、一対一で判断することは得意ではありません。

よって、ピッチの問題を考えるとき、たとえば複数人で尺八を吹く、という場合、あらかじめ音程が似ている演奏者同士をチョイスすることが、唯一の解決策といえます。3人以上で尺八を同時に吹く場合、ピッチの完璧さを要求するのは、現実的ではありません。

 

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