唇を、口笛を吹くように前に突き出して吹いていますが、周囲の人々と、違うようです。
結論から言って、この演奏方法は不合理です。
この口笛のように唇を前に突き出す演奏法を「口笛奏法」とここで仮に名付けるとすると、口笛奏法では、演奏できないことはありませんが、ある一定以上の演奏をできるようにはなりません。
合理的な唇の形とは、両端を、横に伸ばした形です。(この奏法は一般的な唇の形なので、あえて名前を付けたりしません)
この形と比較して、口笛奏法が不合理といえる点は、以下の2点です。
まず、一つめの不合理な点、口笛奏法では、唇の形が一定になりません。
直接息の形を整える、唇の中心部に緊張を加えるため、緊張のたびに、息の形が変わることになります。
また吸気時、唇の緊張を一旦解除しなくてはならず、吸気のたびに緊張と弛緩を繰り返さなければならない、その度に当たるか、外れるかのようなバクチ的な演奏になってしまいます。
これに対して両端を横に伸ばす形では、直接緊張させる部位が唇の中心部から離れており、唇の形が安定しやすいこと、唇の両端を緊張させたままでも、口をあけて息を吸い込むことが可能であることから、合理的といえます。
そしてもう一つの不合理な点、それは、唇の周囲の筋肉と声帯の筋肉とは実は連動しており、横に延ばさないと声帯が開きっぱなしとなる、ということです。
上級者と上級者未満の演奏を区別する一つの重大な要素として、意識的か無意識かに関わらず、声帯を閉じて演奏しているか、ということが挙げられます。
声帯の開閉は、直接意識的に行うことはできず、その周囲の筋肉の使い方で結果として開閉されるのですが、この詳細については別の機会に紹介するとして、尺八の演奏上、この声帯が閉じていなければ、「良い」演奏はできません。
この声帯の開閉に連動する筋肉の一つが、唇の周囲の筋肉です。唇の周囲の筋肉の緊張だけでは声帯を閉じるにはまだ十分ではないのですが、唇の両端が横に伸びていない状態は、声帯への筋肉が弛緩しきっている状態なので、ここから声帯を閉じようとするのは不可能です。
初学時、口笛奏法で偶然音が鳴ってしまうと、それで固めてしまうことになります。唇の形は人それぞれであり、口笛奏法以外で音を鳴らすことが困難だ、という人も、長期的視点からすれば、以上2点の致命傷の克服のため、どこかで根本的に矯正する必要があるのです。
Comments
“025: 唇の形がみんなと違う” への2件のフィードバック
20年以上、唇をやわらかく保つことと唇周囲の筋肉を緊張させることを
混同してきてしまいました。唇に負担をかけて吹くと、途中で何度も唇の
形が変わり、安定した演奏が出来ず、またとても疲れます。口笛の形で
長年、悩みながら吹いてきたのが本当に悔やまれます。先生のお話しで
上達しない訳がよく解りました。有り難うございます。曲の出だしや
息の少なくなった状態で、音が震えてしまうのは、やはり声帯との
つながりなのでしょうか?特に甲イが震えやすく、きれいに出せないのは
声帯が閉じていない為なのでしょうか? 口を横に引く訓練で効果的な練習法
はありますでしょうか?強く吹いても乱れないようにしたいのですが。
鏡を見ながら吹くことをお薦めします。上達塾036で紹介している「乙のレを6秒間」を、稽古の最初5分間に費やしてみてください。今までやってこられた「音が出やすい」と感じるポイントからずらして吹くことは相当な大手術だと思います、腰を据えてじっくりと挑戦してください。
また、音の震えに関しては、楽器に特に問題がなければ、声帯うんぬんよりも呼吸面の不具合による可能性が高いと思います。声帯への意識より、まず唇の形への意識を優先させましょう。唇の形が呼吸と声帯に影響を与え、結果として良い状態に向かっていくのが理想的です。