036: 呼吸のトレーニングについて

呼吸に関するトレーニングは、どのようなことをすればよいですか。

呼吸に関するトレーニングについては、008:長く息がのばせない で取り上げましたが、今回更に別の方向からご説明します。

呼吸には、たいへん大雑把に言ってしまえば胸式呼吸と腹式呼吸の二通りがあります。

胸式呼吸とは、肋骨群を上方に開くことで肺を拡張します。量的にたくさん吸えるのですが骨を稼働させるので瞬発性がありません。

腹式呼吸とは、横隔膜を下方に収縮させることで肺を拡張します。横隔膜は筋肉なので瞬発性が高く、楽器演奏時の瞬時のブレス(息継ぎ)に適しています。

この腹式呼吸を適切に行う方法を、以下ご説明します。

1.下に向けて吸う

人は大きく息を吸おうとするとき、必ず「矢印」が発生します。何も考えずにやると、この矢印はたいてい「頭の斜め上の後ろ」に向かっているはずです。(これが胸式呼吸、ラジオ体操の深呼吸)

試しにやってみてください。この矢印を、「下」に向けて吸います。息を吸うのに合わせて、首と肩を下方向に沈めてみましょう。初めてやると、結構難しいと思います。直立してやると、多少やり易くなるかもしれません。

下に向けて息を吸うとき、お腹がぷくっとふくれることを実感してください。これが大事です。

2.腹筋を常に緊張させ続ける

横隔膜は自分の意思で動かせない「不随意筋」ですが、お腹の筋肉は自分の意志で動かせる「随意筋」です。よって腹式呼吸を行おうとするとき、おへその周囲の腹直筋と脇腹の腹斜筋のあたりの筋肉を意識することになります。これらの筋肉を、息を吐くときだけでなく吸うときも緊張させて呼吸をコントロールします。

吸うときは腹筋の緊張を解いてよいように思われがちですが、外側からの圧力が掛かっていないと、中にぱんぱんに息を詰め込むことはできません。

過去の尺八の名人は「息は吐きながら吸い、吸いながら吐くのが極意なり」と言われたといいますが、この言葉の意味はすなわち、腹筋の常時緊張であると筆者は解釈しています。

 

演奏のための腹筋トレーニングの一例をご紹介しましょう。

筆者が日常やっているのは、まず乙のレを6秒間延ばします。(メトロノームを使って、一拍=60で6カウントです)

延ばしおわったら息継ぎをして、また6秒間延ばします。

しばらく繰り返していると、8秒延ばせそうな気がしてくるので、そうしたら実際に8秒伸ばしてみます。

その次は10秒、12秒と少しずつ延ばしていき、最終的には30秒くらいを目標とします。

これを約15分ほど続けます。

長く息を延ばすことが目的ではなく、腹筋を常に働かせることができていることを確認するのが目的です。

曲目を演奏する段になると、演奏者はあらゆることを考えなければならなくなるので、呼吸を、腹筋をなどと考える余地はなくなるはずです。

つまり上記のような動きが、無意識にできるまで落とし込めていなければ、この情報は実際の演奏では役に立たないことになります。無意識で体がそう動く状態を目標に、このトレーニングを日常的に行ってみてください。

(慣れてくると、結構やみつきになる面白さがでてくる訓練です)

 

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