ビブラートのかけ方が今ひとつよくわかりません。どのようにかければよいのでしょうか。
ビブラート(ユリ)については、上達塾002: ユリ(首ふり)ができない で一度扱いましたが、ちょっとさっぱりしすぎたので、もう一度別な角度からご説明しましょう。
管楽器の演奏は、実は歌唱の発声に非常に良く似ています。
声楽の攻略法が、ほとんどそのまま尺八で適用できると考えてもよいくらいです。
筆者は声楽について素人なので今後検証していく必要がありますが、「歌と尺八、演奏方法は一緒」という超大胆な仮説を立ててみると、例えば尺八のユリは歌のビブラートのかけ方と共通、ということになってしまいます。
この仮説に基づき、テレビの演歌歌手を見てみると、非常にノドを酷使してビブラートをかけています。
それに合わせて、口の開け幅を広げたり、狭くしたりを繰り返しています。
テレビではわかりませんが、おそらくお腹も相当に働いていることと思います。
つまり、歌の場合、「お腹」「ノド」「唇」の3点でビブラートをかけている、といえそうです。
これが尺八にそのままあてはまる、と筆者は考えます。
唇に関しては賛否あると思いますが、微細な開閉をうまくコントロールすることでビブラートがかけられることは事実です。
3者は互いに独立しており、3つの波の波形を同期させることで、3倍の振幅を得ることができます。
尺八は、これに4番目の波形、横ユリを加算して、更にダイナミックなビブラート波形を生み出すことのできる、世界で唯一の管楽器です。
しかし横ユリは最初からかけようとすると、ぶるぶると首を横に振動させるだけの、制御できない状態に陥りがちです。
息できちんとビブラートをコントロールできるようになった上で、横ユリに挑戦しましょう。
ユリ(ビブラート)は、かけるとかけないで、成果物としての音楽は、全く別ものに仕上がります。
守るだけの音から、積極的に攻撃を展開できる音に。
ひらがなだけの文章と、漢字ひらがなカタカナアルファベット半角全角フル装備携帯絵文字入り、くらいの差があります。
ユリを入れられる頃になって初めて、尺八奏者は音楽としてのスタートラインに立ったといえるのかもしれません。
「ユリ」は、それだけ劇的な効果を生むのですから、棒吹き(ノンビブラート奏法)に慣れた状態からビブラートを生み出すためには、演奏に対する意識の抜本的な改革努力が必要です。
その例としては、例えばチの音一拍以上が出てきたら、必ずユリをかけると心に決める。
壁に「チは必ずユル!」と毛筆で書いて貼ってもよいくらいの勢いで。
チでユリを入れなかったらその場で腕立て10回くらいの勢いで。
ユリを新たに組み込んでいくのは、それくらい大変な作業です。
鼻の穴からスイカを出すのといい勝負です。
最初は、ノドでもお腹でも唇でも何でもよいので、とにかく息でユリをかけてください。
そこからだんだんと、少しずつ慣れていきましょう。
最後に、繰り返しになりますが、ビブラートとは、まっ平らな音から波形を削りにいく行為なので、そもそもの土台となる音、基本吹奏力がガッチリしていないと、ユリをかけようとした瞬間に音がガタガタになり、演奏どころではなくなってしまいます。
自分の音に自信がなければ、ユリはかけようとしないのが賢明です。
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