大きな音を出したいと常々思っています。大きな音を出す吹き方を、教えてください。
尺八は、大きな音を出すだけが全てではありません。
これは、疑いようのない真実です。
大きい音を出したいだけなら、別の楽器をどうぞ。
しかしそうはいっても、それはひとしきり満足な音量を出せる人間が言ってこそ説得力をもちます。学歴なんて意味がない、という言葉は東大出ててはじめて格好つくセリフです。
山の頂上まで登らなければ見えない風景もあります。音量至上主義を捨てるのは、音量はもういいや、とお腹いっぱいの音を出せるようになった後からで十分です。
ということで、音量の拡大方法についてお話しようと思うのですが、この話は多様な要素が複雑に影響しあっており、ズバリこう吹けば大きな音が出るよ、という特効薬はありません。
ただ、その試行の中で最近、筆者の教室で顕著な成果が出ているメソッドがありますので、ここで公開してしまいます。
前提条件として、大きな音が良く鳴る尺八を手にしていることです。ダメな尺八は誰がどう吹こうとダメなので悪しからず。(良く鳴る尺八についての詳細は、上達塾028:尺八を初めて購入するを参照してください)
大きい音の、鳴らし方(意識のスイッチの入れ方)
メトロノームを用意してください。なくてもいいのですが、せっかくなので使いましょう。
やっていただくことは、ビブラート(ユリ)の訓練です。1拍=60に合わせて、カッチンと鳴るタイミングに強く吹く山の頂点を持ってきて、規則正しく波形を作っていきます。(図1)
(これに最終的には首ふりを加えることで尺八のユリは完成しますが、これだけでも実はかなり立派なユリになっています)
【図1】
音は乙のレか、甲のロがよいでしょう。(甲のロの場合は四孔半開で行ってください)
ビブラートの訓練としては、1拍=150~180で2回(1拍=300~360で1回、つまり一秒間に5~6回程度)を目指していただくのですが、ここではスピードを速くすることなく、終始一拍=60で行ってください。
キレイな波形を描くことよりも、上下の振幅の大きさ、つまり強い、弱いの差を激しくつけ、特に強い部分を強調して吹きます。
次に、やはりメトロノームに合わせて、強く吹く部分を1拍に伸ばしてみましょう。(図2)先ほどの図1では強い部分は一瞬でしたが、その一瞬の強さと同じ強さで1拍伸ばします。(可能であれば、強く吹く部分を2拍、3拍と伸ばしていきます)
【図2】
この図2の吹き方で、いつもと違う感覚で吹いていることに気付くことが出来れば成功です。それは今までどこにあるのかわからなかった音量意識のスイッチの発見、大きい音を出す吹き方とはこういうことなのだ、という演奏モードへの切り替えと言えるでしょう。
自分で勝手に音量のリミッター(最大値制限)をかけてしまっている人は大勢います。そんな人には効果テキメンで、突然今までから一転してすさまじい大音量で吹き始めたりするので、実際結構笑ってしまいます。
このスイッチが入ると、音量の増大と共に、密度の高い、硬くて芯のある音を目指して、攻撃的な音づくりが可能になります。ビブラート演奏にもすんなりと溶け込めるようになるでしょう。
あとは、その吹き方で音をどんどんと伸ばしていくだけです。図3では、とっかかりをつかむために最初だけ弱く出ていますが、できるならいきなり図4のように垂直離陸でピーク値にジャンプする方法をとってください。
【図3】
【図4】
まずは、イメージありき。音は後から、自然とついてきます。この音を目指すんだ、というところを、メトロノームにあわせて波形を描く訓練から、汲み取ってください。
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Comments
“050: 音量リミッターの解除” への1件のコメント
私も全くの素人ですが長年練習をして居ますが全然音が出ません。せめて月の砂漠とか故郷位吹けるようになりたいと思っています。お返事頂ければさいわいです。