人に吹いてもらうと良い音が鳴るのに、同じ楽器を自分が吹くと情けなくなることがあります。何が違うのでしょうか。
皆さん、尺八をシャコンとつないで、まず何の音を吹きますか?
いわゆる「音出し」というものですが、このときに使う音としてお薦めするのは「乙のチ」です。
これは上達塾047:調子の悪い日の対処法で紹介した内容ですが、最近筆者の教室で試みたところびっくりするくらいの効果が現れつつあり正直びっくりしてますので、この場で詳しくご紹介してしまいます。
乙のチを普通に吹くのではなく、ちょっと特殊な吹き方をします。音を伸ばさずに、タンギング(tu、tu)を使用してパン、パンと鳴らします。強烈な破裂音、アクセントをつけたスタッカート音です。
この吹き方では、唇と歌口の位置関係が合っていないと、甲の音が鳴ってしまい、乙の音は鳴りません。乙の音を鳴らすためには、完全にベストな一点のポイントをつかまえて吹かなくてはなりません。
それをつかまえるために、下管を持っている手(左上・右下であれば右手)は手孔からはずして、上管の中央部分を握ります。上管を握った手で、歌口の位置の微調整を行います。微調整のポイントは以下の4点です。
1.歌口の左右の位置、ねじれの補正(鏡があると便利です)
2.歌口の上下の位置
3.角度(管尻の上下移動)
4.下アゴの噛み合わせ位置(歌口の前後の位置)
↓この作業を実際に行った例です。(音量注意)音出し例:チ
多少オーバーにやってますが、息の強さなど息の加減は変えていません。右手で歌口(アゴ当たり)の上下の位置を少しずつずらしています。ポイントに当たり始めると、はじめ甲だった音が乙に変化していきます。
最も抵抗が大きくなる場所が、その尺八のスイートスポット(sweetspot:最適な一点)です。怖いくらいに管全体がビリビリと共鳴しながら乙音が鳴っていることを確認してください。
ポイントをつかまえたら、そのまま音をしっかりと伸ばしてみてください。このときあなたは、尺八の音色の面白さ、素晴らしさに触れ、感動を覚えるかもしれません。
どうしても乙の音が鳴らなければ、また明日試してみてください。その日その日でだいぶ身体的な状況が変化する可能性があります。
それでも鳴らなければ、別の尺八で試してみてください。
それでもダメなら、また半年後に試してください。
試せばわかるこの威力、あなたの尺八生活を劇的に変貌させる危険性があり、ようするにイチオシの練習方法です。
あなたはまだ、音出しでロを吹いているのですか?
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