049: 表現力豊かな演奏とは

表現力豊かな演奏に憧れます。情感たっぷりに演奏出来るようになるために、どのような稽古をすればよいのでしょうか。

尺八奏者は、表現力豊かな演奏が苦手です。

原因は楽譜盲従の呪縛、無節操な首ふりの弊害、そして何よりも意識の欠落です。

今回はこの欠落している意識をいかに作り出すかというその取っ掛かりを、考えます。

そもそも、表現力豊かな演奏、って、一体何でしょう。

それは、「その場に最適な表現を『選択』して」演奏する、ということです。

だいぶ違うように見えますが、だいたいこれで合ってます。『選択』というところがポイントです。

例えば、楽譜に「乙のレ」が4拍書いてあるとします。

これを、「表現力豊かに」演奏するには、どうすればよいでしょうか。

初学時、演奏者は音を楽譜どおりに出すだけで精一杯です。この時、与えられている選択肢は一つだけです。「乙のレ」を4拍、ぺろーと伸ばすだけ。表現力豊かとは、ほど遠い演奏内容です。(世間一般の尺八演奏の平均値は、悲しいかな、このへんです)

もっと多くの選択肢が必要です。

ただ吹くだけ、から2個目、3個目と選択肢を増やしていくにはどうすればよいのでしょう。

それには、旋律を歌い上げる「歌唱力」を鍛えることです。

ここでいう「歌唱力」とは実際に声に出す、尺八を吹く技能ということではなく、頭の中でその旋律をどのように構築できるかという能力です。(具体的な鍛え上げ方は、上達塾018上達塾026を参照してください)

これを考えることができるようになると、同じ一つの旋律を演奏するレパートリー、選択肢が飛躍的に増えていきます。その選択肢の中から最適なものをその場に応じて選び取って演奏していくとき、「表現力豊かな演奏だ」と聴く側は感じるわけです。(もちろん、その選択肢を実際の音に変換するだけの吹奏技量がなければなりませんが)

まとめると、表現力豊かな演奏とは「その旋律を演奏する上で考えられる数多くの演奏パターンの中から、その場に最適な表現を『選択』して演奏する」ということであり、表現力を豊かにするためには「歌唱力」を鍛えて一つでも多くの選択肢を用意しておくことです。

選考対象にノミネートできる演奏パターン数が多いほど、表現力豊かということに理論上なります。

あなたは、「乙のレ」4拍を、何通りで表現できますか?

 

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