コトきのための尺八シャクハチ検定ケンテイ
尺八の立場から、合奏時にこれだけは知っておいてほしいと思う内容をまとめました。力試しというよりは、知識の拡充、気付きのきっかけとして役立ててください。そのために解説をできる限り詳細に記しました。もちろん、尺八の方もどうぞ。 左下のタブで検定の階級を切り替えて下さい。(全7階級+1)
Q D(壱越)の採音のために尺八に吹いてもらう音は? 尺八はさまざまな長さのものがありますが、基本的には「一尺八寸管(はっすんかん)」を用います。(曲目によっては六寸、二尺一寸などを使い分けます。「春の海」では六寸を用いて演奏します)長さが異なれば演奏可能な音域が上下します。糸方としては、まずは一尺八寸管の場合を前提に慣れておくことが必要です。一尺八寸管でD(壱越)は「ロ」です。「ロを吹いて下さい」と言えば通じるでしょう。(厳密には「カンのロ」と指定した方がベストです) A 8-1
1 一尺八寸管のロ 1
2 一尺八寸管のリ 2  
3 一尺八寸管のレ 3  
       
Q 調絃の全体を半音だけ下げた場合、合奏する尺八は? 演奏会当日の声の都合などにより調絃を本来の音高より上下させることはよく行われます。このとき、合奏する尺八は、楽器自体を持ち替えなければなりません。短い尺八は音程が高く、長い尺八は低くなります。演奏会の当日になってからでは準備ができませんし、そもそも七寸管、九寸管自体を持ち合わせていない場合がありますので、調絃についての打ち合わせはお早めに。 A 8-2
1 一尺七寸管 1  
2 一尺九寸管 2
       
       
Q 都山流と琴古流の組み合わせで、もっとも適切なものは? 尺八の二大流派は都山流(とざんりゅう)と琴古流(きんこりゅう)です。ごく一般的な分類として、都山流は現代曲中心、琴古流は古典中心と得意分野を分類することができますが、結局のところは演奏者個人の問題として支障ありません。但し、地歌・筝曲と都山流尺八の相性が適切でないとする箏の会派もあるようです。 A 8-3
1 都山流=現代曲、琴古流=古典 1
2 都山流=古典、琴古流=現代曲 2  
       
       
Q 地歌・箏曲の中には、山田流と生田流で演奏形式の違いが非常に顕著な曲目があります。次のうち、そうした曲目に「当たらない」ものは? 山田流と生田流では、同じ曲目を演奏するにしても、曲の運び(緩急のつけ方、速度)が大きく異なることがほとんどです。ごく一般論としてそれぞれの印象を表現すれば、山田流は緩急のつけ方が頻繁かつダイナミックで、生田流は快速部が非常に速い、といえます。そうした中でも、全く違う曲として扱ってもよいくらいに違いが顕著な曲目が、吾妻(東)獅子、磯千鳥、松竹梅の3曲です。尺八の楽譜は主に山田・生田のどちらかを主体として書かれているので、合奏時は逐一の検証が必須です。
A 8-4
1 吾妻(東)獅子 1  
2 磯千鳥 2  
3 松竹梅 3  
4 若菜 4
Q 「段合わせ」が行えない曲目は? 尺八は三曲合奏の範疇において、本手・替手による形式を除けば、重奏の演奏形態を持ちません。その中で、いわゆる「段合わせ」(同じ拍数により作曲された各段を同時に演奏することで重奏とできる)は重宝されます。段合わせが可能な曲目の代表が、楫枕、春の曲、夏の曲、秋の曲です。尺八主導の演奏会では、こうした段合わせを要望される可能性があります。段合わせを行う場合は、糸方が初段、二段と弾くのに合わせて尺八が二段、初段と演奏する場合や、或いは糸方が初段を弾くのに合わせて尺八が二段を演奏し、そのまま糸方は二段を弾かずに先へ進むなどのバリエーションが考えられ、事前に申し合わせが必要です。
A 8-5
1 楫枕 1  
2 夏の曲 2  
3 秋の曲 3  
4 冬の曲 4
Q 次のうち尺八が「メリ音」である可能性が高いのは? 一般的な尺八は手孔が5つしかなく、これで十二音階の不足する7音を補うため、孔を半開とし、アゴを引くことで音律を調整します。(箏の押し手の概念に該当します)そうして発音された音は、くぐもったような、かすれたような音色となり、音量は他の音に比べて小さく、音程は不安定になります。これを琴古流および一般的には「メリ音(おと)」、都山流では特に「半音(はんおん)」と呼びます。一尺八寸管でメリ音を用いずに発音可能なのはCDFGAの5音で、平調子(壱=D)の「六」にあたるEフラット(es)の音は、尺八のメリ音になります。尚、音量、音程の不安定さや、運指の煩雑さを嫌って手孔を2つ多く開削してある「七孔尺八(ななこうしゃくはち)」というものも存在します。(これを用いた場合、本問の問いは「該当なし」となってしまいます)尺八の新品は全て「五孔尺八」で、これをそのまま使い続ける人が多く、教える側もそのような傾向が強いので、七孔尺八を使用している人口は多くはありません。
A 8-6
1 平調子(壱=D)の「五」 1  
2 平調子(壱=D)の「六」 2
3 平調子(壱=D)の「七」 3  
4 平調子(壱=D)の「八」 4  
Q 「掛け合い」で尺八と同じ部分を演奏するのは? 尺八が掛け合いを吹く部分は、曲の中で最も根幹となるパートを補う部分です。すなわち、三絃、三絃がなければ箏本手を補う部分です。 A 8-7
1 三絃 1  
2 箏本手 2  
3 箏替手 3
       
Q 都山流と琴古流で、呼び名が違う音名は? 都山流と琴古流で、楽譜上の違いはいろいろとありますが、最も注意すべき点は、一尺八寸管での「C」の音名です。都山流ではこれを「ハ」とよび、琴古流では低音を「リ」、高音を「ヒ」とよびます。これに派生する事項はあまりに煩雑となるのでここでは割愛しますが、少なくともこの違いは決定的ですので、どこかに書き留めておくと役に立つことがあるかもしれません。(尚、都山流の「ハ」は楽譜上は漢字の「人」に非常に似た形をしています) A 8-8
1 1
2 2  
3 3  
4 4  
Q 次のうち他と異なる曲目は? 宮城道雄作品の中には、「春の賦」「松」など、フルートを編成に加えた曲目が目をひきます。それらほとんどは大編成の曲目ですが、4.「希望の朝」は、箏・フルートの二重奏として作曲された曲目です。(他の3曲は箏・尺八の二重奏として作曲された) A 8-9
1 春の海 1  
2 こほろぎ 2  
3 3  
4 希望の朝 4
Q 調絃上の注意として適切でないものは? 1.尺八は吹き始めは音程が低く、この時点で調絃を行うのは適切ではありません。2.現在の国際標準は442Hzで、邦楽界もこれにならっています。3.特に絹糸は伸びたり、また運搬時に柱の位置がずれたりということはよくあります。演奏の直前に調絃を確認することは悪いことではありません。4.尺八は小さい音量で吹くと音程が下がり気味になり、調絃時に吹いてもらう音としては適切ではありません。特に大きな音で吹いてもらう必要もありませんが、普通に吹いてもらいましょう。 A 8-10
1 尺八は演奏を続けて管が暖まってくると音程が上昇しがちなので、しばらく吹いてもらった後で採音する。 1  
2 特に申し合わせがないときは、ピッチを442Hzに合わせてよい。 2  
3 舞台上で調絃確認を行うと客席に音が聞こえてしまうが、これは仕方のないことである。 3  
4 舞台上で調絃確認を行う際は、尺八はなるべく小さい音で吹いてもらう。 4